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Medical facility |
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医療施設紹介
静岡社会健康医学大学院大学
地域医療や公衆衛生を軸に、臨床の現場で生まれた問いを、データと研究の視点から考える大学院大学です。
働きながら学べる環境のもと、さまざまな専門職が実践と研究をつなぐ学びを重ねています。
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| 学長 宮地 良樹 先生 | 朝比 奈彩 先生 | 学内紹介 |
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Interview Vol.001 |
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学長 宮地 良樹 先生
― 静岡社会健康医学大学院大学が目指すもの ―
| 01 | 「社会健康医学」とは? なぜ“大学院大学”なのか |
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静岡県は、人口約350万人を抱えながら、医師の確保と定着が長年の課題でした。東京と名古屋に挟まれ、育った医師が県外へ流出してしまう。
「どうすれば、医師が静岡に残ってくれるのか」――そこから、この大学の構想は始まりました。私たちが考えた答えの一つが、臨床を続けながら学べる場をつくることでした。臨床の現場で感じる疑問や違和感は日々の診療だけでは解決できないことも少なくありません。社会健康医学は、そうした問いをデータと科学的手法で掘り下げ、医療を社会や地域の視点から捉え直す学問です。医療の質を一段引き上げるための学びだと思っています。
海外では、公衆衛生や社会医学を専門に学ぶ大学院は珍しくありません。一方、日本では十分に育ってきたとは言えませんでした。だからこそ、静岡でこの学びを根づかせる意味があると考えました。働きながら学び、現場の疑問を研究につなげ、その成果をまた現場に還元する。この循環が回り始めることで、医師が育ち、地域医療も確実に良くなっていくと考えています。
| 02 | 働きながら学ぶという、新しい選択肢― 「このままでいいのかな」と思ったときに |
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本学が大切にしているのは、社会人が無理なく学び続けられる環境です。
医師をはじめ多くの医療専門職は、家庭や仕事を抱えながら、自身のキャリアの方向性を考える時期を迎えます。授業は金曜午後と土曜日を中心に編成し、オンラインも活用しています。出産 や育児、時短勤務といったライフイベントの中でも、学びを止めずに続けられる仕組みです。実際に、育休中や時短勤務の時期に入学し、それぞれの生活に合わせて学んでいる方もいます。日常の延長線上で学べることが、この大学院の大きな特徴です。
この学びは、医師に限りません。理学療法士や保健師など、多様な専門職が在籍しています。また、第一線で活躍してきた方が、あらためて新しい視点やデータに基づく学びを求めて入学されることもあります。
「このままでいいのだろうか」「別の視点を身につけたい」そんな迷いを持った時にキャリアの途中で立ち止まり、次の一歩を考えるための場でもあります。
| 03 | 医師だけでは見えない医療がある ― 多職種と学ぶ楽しさ |
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静岡社会健康医学大学院大学の学びの特徴の一つは、多様な専門職が同じ場で学んでいることです。看護師、保健師、理学療法士、検査技師など、それぞれ異なる現場を持つ人が集まり、同じテーマについて議論を重ねます。立場や職種の違いによるヒエラルキーはなく、医師も「先生」ではなく「さん」づけで呼び、互いを尊重し合うフラットな関係性が、この場の土台にあります。医師だけでは気づかなかった視点、医療の現場では見落としがちな課題が、他職種の言葉によって浮かび上がることも少なくありません。
それぞれがこれまでの経験を持ち寄ることで、医療を一方向からではなく、多面的に捉える力が自然と養われていきます。
「そういう見方があったのか」という気づきが、学びの面白さにつながっています。
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静岡でしかできない医学 ― 地域ビッグデータから健康を考える |
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働きながら学び、現場で培ってきたスキルをさらに高めてもらうこと。その積み重ねが、結果として地域全体の医療や健康を底上げしていく――本学は、そうした循環を大切にしています。
全国を見渡すと、県ごとに平均寿命や健康状態には大きな差があります。なぜその違いが生まれるのかを考え、データとして検証しなければ、本当の意味での対策は見えてきません。
静岡県では、これまでの行政の取り組みの積み重ねにより、県内すべての市町の同意を得た医療・健康データが整備されてきました。本学はそのビッグデータを活用し、地域差の背景や健康に影響する要因を、長期的な視点で探っています。
臨床の現場にいると見えにくいことも、少し視点を引くことで、社会全体から捉え直すことができます。医療を「治療」で終わらせず、地域や社会の中でどう支えていくのかを考える。そうした視点を持った人材が育つことが、静岡の医療をこれから先につなげていくと考えています。
| 05 | 地域とともに学ぶ ― 連携大学院という新しいかたち |
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本学では、県立病院機構や中東遠総合医療センターなど、県内の医療機関と連携大学院協定を結び、所属先に籍を置いたまま、働きながら学べる環境を整えてきました。勤務先に指導教員を置くことも可能で日々の臨床や業務の延長線上で学びを深められるのが、大きな特徴です。「ここまで来るのは大変だけれど、自分の現場でなら学べる」そんな声に応えるため、選択肢を広げてきました。
また、いきなり入学するのは不安、という方のために、科目履修生として学べる地域保健リーダー育成プログラムも用意しています。実習を通して「何ができるのか」を体験したうえで、入学を決める方もいます。市町や県と共同研究を行い、データを活用した成果が見えてくることで、行政や医療機関の理解も少しずつ広がってきました。
学びたいという気持ちは、誰にでもあります。それを「今は難しい」と諦めなくていい仕組みを地域と連携しながらつくることも、大学の役割だと考えています。
| 06 | 若手医師の方へのメッセージ |
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日々の診療に向き合う中で、「このままでいいのだろうか」「もっと違う視点が必要なのでは」と感じる瞬間は、誰にでも訪れます。それは迷いではなく、医師として成長しようとする自然な問いだと思います。
静岡社会健康医学大学院大学は、臨床を離れるための場所ではありません。むしろ、臨床で抱いた疑問や違和感を、学問として掘り下げ、再び現場に持ち帰るための場所です。
出産や育児、働き方の変化など、人生の節目に立ったとき、ここで学ぶという選択肢があることを、心の片隅に置いてもらえたらと思います。
自分の経験を、もう一段深めたい。医療の先にある社会まで視野を広げたい。そんな思いを持つ若手医師にとって、本学が新たな一歩を踏み出す場になれば幸いです。
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Interview Vol.002 |
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朝比 奈彩 先生
「臨床から離れた時間も、キャリアはつながっている」
| 01 | 医師としてのキャリアのスタートについて教えてください。 |
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【医師としてのスタート】
静岡県出身で、医科大学卒業後は興味のあった血液内科に入局し、臨床医としてキャリアをスタートしました。専門領域で診療に携わりながら経験を積む、ごく自然な流れの中にあり、当時は「王道のキャリア」を歩んでいるという感覚だったと思います。臨床の現場で患者さんと向き合いながら専門性を高めていく日々に、大きなやりがいを感じていました。
| 02 | キャリアの転機となった出来事は何でしたか。 |
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【結婚・子育てとキャリア転機】
結婚を機に転居することになり、進路を改めて考えざるを得なくなったことが大きな転機でした。所属医局の関連施設が転居先にはなく、これまでの延長線上の働き方が難しい状況となりました。
ちょうど出産・子育ての時期とも重なり、育児と両立できる働き方を現実的に考える必要がありました。その中で紹介されたのが検査部での勤務でした。当直や病棟業務がなく、管理業務中心の働き方は子育てとの両立という点で非常に働きやすく、子どもの体調不良にも対応しやすい環境であったことは大きな安心感につながりました。
| 03 | 臨床の現場から離れることへの葛藤はありましたか。 |
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【臨床から離れた葛藤(臨床ロス)】
はい、とても大きかったです。血液内科医として診療にやりがいを感じていた分、臨床から離れたことで、やりがいが大きく下がったように感じる時期がありました。「いずれ臨床に戻りたい」という思いもあり、いわゆる臨床ロスのような感覚を抱えていたと思います。
また、臨床から離れる期間が長くなるほど、戻ることへの不安も大きくなりました。子育てを優先する選択は納得していた一方で、自分のキャリアがこのまま停滞してしまうのではないかという思いは常にあり、将来について悩むことも少なくありませんでした。
| 04 | 検査部での勤務の中で見えてきたことはありますか。 |
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【それでも検査部で見つけたやりがい】
働き始めた当初は臨床から離れたという意識が強かったのですが、次第に臨床検査分野の面白さに気づくようになりました。検査データを通して患者さんの状態を俯瞰的に捉える視点は、臨床とはまた異なる学びがありました。
また、技師の方々の研究に対して医師として助言を求められる機会も多く、チームの中での役割の大切さを実感しました。周囲の先生方や技師の皆さんに支えられながら経験を重ねるうちに、新たなやりがいや楽しさを見いだせるようになったと感じています。
| 05 | 大学院進学を考えたきっかけは何でしたか。 |
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【30〜40代での再考(大学院進学動機)】
子どもが成長し、生活に少し余裕が生まれた頃、「この先どのようなキャリアを積んでいけばよいのだろう」と改めて考えるようになりました。
検査部では、技師の方々の研究について医師として助言を求められる機会が多くありましたが、これまでは経験に基づいて対応している部分もあり、「根拠をもって助言できるようになりたい」という思いが次第に強くなっていきました。
その頃、働きながら学べる大学院の存在を知り、これまでの経験を活かしながら学び直せる場だと感じ、進学を決意しました。研究への強い志向というよりも、自分のキャリアを次の段階に進めたいという思いが大きかったと思います。
| 06 | 大学院進学にあたって、両立(仕事×家庭・臨床実務×研究)への不安はありましたか。 |
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【両立のリアル】
やはり一番大きかったのは、時間のやりくりと家族への負担でした。仕事に加えて大学院での学びが加わるため、「本当に両立できるのだろうか」という不安は常にありました。特に授業は金曜日の夜や土曜日に行われるため、土曜日に家を空けることについては、主人も当初は心配していたように思います。子どもたちは大きく困る様子はありませんでしたが、「お母さん忙しそうだから」と家のことを手伝ってくれることもあり、家族の理解と協力に支えられていたと感じています。
| 07 | 実際にはどのように時間を調整して乗り越えましたか。 |
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授業は基本的に金曜日午後と土曜日のみです。そのため、生活のリズムを大きく崩さずに続けることができたと思います。
また、オンラインで受講できる授業もあり、学会出張の際にホテルから受講するなど、状況に応じて柔軟に対応できたことは大きな助けになりました。
職場にも進学について事前に相談しており、理解のある環境であったことも、継続できた大きな要因です。仕事・子育て・大学院という三つの役割を完全に無理なくこなせたというよりは、周囲の協力を得ながらバランスを取り続けた、というのが実際の感覚に近いと思います。
| 08 | 家庭への影響はありましたか。 |
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大学院で学ぶ姿勢は家庭にも自然な形で影響したと感じています。主人が統計解析に関心を持ち、学会発表に取り組むようになるなど、学びについて話し合う機会が増えました。
また、複数の役割を担う中で、家族が自然に家事を手伝ってくれる場面もありました。振り返ると、家族の理解と協力があったからこそ、学びを継続できたのだと思います。
| 09 | 大学院での学びはこれまでのキャリアとどのようにつながっていますか。 |
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【学び直しの意義(研究・統計・公衆衛生)】
最も大きく変わったのは、物事の捉え方です。臨床では迅速な判断が求められますが、大学院では「なぜそう言えるのか」「どのような根拠があるのか」と立ち止まって考える習慣が身につきました。
統計や研究手法を体系的に学んだことで、研究計画や解析について根拠をもって説明できるようになり、助言する際の自信にもつながりました。また、公衆衛生や大規模データに触れることで、医療をより広い視点で捉えるようになったと感じています。
血液内科、検査部、研究という経験は分断されたものではなく、一本の線としてつながっていると受け止められるようになりました。臨床経験は決して無駄にならず、研究においても臨床医としての視点が大きく活かされていると実感しています。
| 10 | 後輩の先生方へメッセージをお願いします。 |
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【女性医師へのメッセージ】
出産や育児などのライフイベントによって、思い描いていた通りのキャリアを歩めない時期は誰にでもあると思います。私自身も、臨床から離れたことで葛藤や不安を感じた時期がありました。
しかし、一度立ち止まる時期があったとしても、それは決して遠回りではないと感じています。臨床から離れた経験や子育ての経験も、公衆衛生的な視点や柔軟な対応力という形で医師としての成長につながっていました。
また、学び直しは何歳からでも可能です。状況は変化していきますし、子どもも成長します。多少の大変さはあっても、周囲の協力を得ながら続けることは十分可能でした。
大切なのは、「自分が選んだ道を正解にしていく」という姿勢だと思います。キャリアの形は一つではありません。同じように迷っている先生方にとって、「こういう道もある」と感じていただけたら嬉しく思います。
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Interview Vol.003 |
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学内紹介
静岡社会健康医学大学院大学は日々の仕事と両立しながら学べるよう、環境が整えられています。忙しさの中でも、無理なく学びを続けられる場所になっています。ここでは、そんな学内の魅力をご紹介します。
| 01 | 臨床と両立できる学習環境 |
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講義室は対面とオンラインの併用に対応し、診療後や当直明けでも無理なく参加できる環境が整っています。「通えないから諦める」のではなく、「今の働き方のまま学べる」ことを大切にした学習空間です。
| 02 | 医局感覚で使える、自分の居場所 |
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学生用の執務スペースには、医局を思わせるデスク環境が用意されています。24時間利用可能で、研究やレポート作成、ちょっとした空き時間の作業にも対応できます。病院の医局とは違い、業務に追われず、自分のテーマに向き合える静けさがある点が、この空間の大きな特徴です。
| 03 | 実データを扱う、本格的な研究基盤 |
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静岡県の医療・健康データを扱うための専用解析環境が整備されています。厳格な管理体制のもとで、地域医療の実態をデータとして捉え、検証することが可能です。臨床の現場での気づきを、研究につなげられる環境です。
| 04 | 診療科を超えて広がる視点 |
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在籍する医師の専門分野は、内科、救急、感染症、皮膚科など多岐にわたります。日常診療では交わることの少ない視点に触れることで、医療を多面的に捉える力が養われていきます。職種や立場の異なる人が、それぞれの経験や課題を持ち寄り、学び合える雰囲気があります。
| 05 | 長時間いても疲れにくい、静かな空間 |
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学内は木の温もりを活かした落ち着いたデザインで、長時間の研究や自習でも集中力を保ちやすい環境です。忙しい日常から一歩離れ、医師として立ち止まり、考える時間を確保できる場所になっています。
| 06 | 医師の学びを支える“余白” |
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ラウンジや図書スペースなど、学びの合間に気持ちを切り替えられる空間も充実しています。常に誰かと話さなければならないわけでもなく、孤立することもない、ほどよい距離感が保たれています。
24時間利用可能な図書館は、公衆衛生学の5つのコア領域を中心に教育研究に必要な選書を揃えています。また、電子ジャーナル・データベースは約4,000タイトル収載しています。
| 07 | 体力づくり・コンディションを整える場所 |
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学内には、体力測定や運動機能のチェックができるスペースが設けられています。長時間労働や不規則な勤務になりがちな医師にとって、自分の身体の状態を客観的に把握できる環境は大きな価値があります。研究や講義の合間に、身体を動かし、コンディションを整える。「学ぶ」「働く」だけでなく、自分の健康にも目を向けることができる大学である点は、この大学ならではの特徴です。


